仙台やまいち不動産投資センター

トピックスTOPICS

2026.02.09

3か月滞納でも「自力救済」は許されない ~入居者を締め出して損害賠償を受けた例~

 本判決は、賃料等を3か月滞納していた賃借人に対し、賃貸人が鍵穴カバーで締め出し、さらに家財一式を撤去・処分した事案で、賃貸人の不法行為責任を認めました。加えて、明渡し合意書が交わされていたにもかかわらず、それを根拠に違法性は消えないとし、損害賠償(慰謝料含む)を認容するとともに、賃貸人の賃料請求も一定期間認めませんでした。

 

≪事案の概要≫

・賃借人は月額9万円(賃料等)で居住していたが、平成25年5月分〜7月分の賃料等を滞納(3か月)。

・賃貸人は、賃借人ら外出中の8月1日に玄関の鍵穴を金属カバーで覆い、入室不能にした(締め出し)。

・8月26日、賃貸人側が「合意書に署名押印すれば入れるようにする」旨述べて契約解除・明渡し合意書締結を迫り、署名後にカバーを取り外した。

・その後、合意した期限後、9月12日には家財一式が撤去・処分されていた。

 

≪実務上参考となる3つのポイント≫

①「3か月滞納」滞納があるからといって自力救済は許されない

本件は、賃料滞納が3か月に及んでいたため、賃貸人が鍵穴カバーで入室をできなくしたのですが、裁判所は、この行為および家財撤去・処分行為を、いずれも賃借人らに対する不法行為であることは明らかと判断しています。滞納が続いているから鍵を変える等で閉め出すことは許されません。

②合意書を締結していても盾にならない

本件では、8月26日に「契約解除・明渡し合意書」が作成され、そこには(一定時点以降の)残置動産を処分できる旨の定めがありました。 裁判所は、合意書があっても、そもそも賃貸人が締め出し(不法行為)を行った当事者であり、「署名押印すればカバーを外す」と述べて署名押印させた、という経緯から、合意書によって撤去・処分の違法性が阻却されるものではないと述べています。 よく滞納入居者から合意書を取得しようとする方がいますが、このように有効とは限りません。

③慰謝料を含む損害賠償が認められ、賃料請求も一定期間遮断――裁判所の「自力救済」への厳しい態度

裁判所は損害として、各原告につき

・慰謝料50万円

・財産的損害30万円(民訴法248条による認定)

・弁護士費用8万円

合計88万円(2人で176万円)を認めました。 さらに反訴(賃貸人の未払賃料等請求)について、締め出しや侵入・撤去への恐怖により居住できない状態であり、賃貸人は「使用収益させる義務」を履行していないとして、賃料等の支払義務を一部否定しました。 損害賠償が認められるだけでなく、賃貸人が回収したいはずの賃料請求まで一部は認められませんでした。裁判所の自力救済を許さないとする態度が表れているといえるでしょう。

 

このほかにも、貸主が借主を締め出したり、残置物を処分したことが不動産侵奪罪や器物損壊罪などの刑法上の処罰対象になる場合もあります。自力救済の禁止については改めて確認しましょう。

 

参考:東京地判 平成30322REITO・ウェストロー

弁護士法人 一新総合法律事務所

弁護士 大橋 良二 氏

一覧へ戻る