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2026.01.12
大規模修繕工事を行うときの注意点 ~説明義務と騒音トラブルの裁判例から~
アパートも築10年から15年前後を過ぎると、外壁や防水の大規模修繕工事を検討する時期に入ります。大規模修繕では、足場の設置やネットがかかり、日中は騒音も生じるなど入居者の生活への影響が生じ、クレームが生じることも少なくありません。この点について、裁判例から押さえておきたい点をあげます。
≪契約時の「説明義務」に関する裁判例≫
借主が、賃貸借契約を結んだ直後に、約2か月強の大規模修繕が予定されていたことを知り、「契約時に説明がなかった」として家賃の一部や引越費用、慰謝料などを請求した事案です。裁判所は「工事期間や内容は、借りるかどうかの判断に影響する重要な情報だ」として、貸主の説明義務違反を認めました。もっとも、契約が無効という主張は否定され、貸主の責任は慰謝料等33万円が認められています。
(参照先RETIO. NO.118 2020 年夏号、東京地裁平成31年2月6日判決・ウエストロー・ジャパン)
≪工事中の騒音・臭気をめぐる裁判例≫
こちらでは、大規模修繕により、入居者家族が「受忍限度を超える騒音・臭気・ほこり・日照阻害があり、健康被害も出た」と主張し、施工会社と転貸人に賠償を求めましたが、裁判所はいずれの請求も認めませんでした。
工事は建物維持のために必要な大規模修繕で、騒音や振動、ほりや日照権侵害についても受忍限度を超えているとは認められず、健康被害との因果関係も裏付けられないと判断されています。
(参照先、RETIO.No.136 2025年冬号、東京高裁令和5年11月1日判決ウェストロー)
これらの裁判例から見ると、①契約前に具体的な大規模修繕の予定が決まっている場合には、期間、内容及び想定される影響をきちんと説明しておくこと、②適切な工事を行い必要な対処をすれば大規模修繕を行うからといって賠償責任を負うわけではないこと、などが重要なポイントといえます。
大規模修繕は、建物価値を守り物件の競争力を高めるうえで避けて通れない一方、入居者の不満が噴き出しやすいタイミングでもあります。契約前の説明と、適切な工事を依頼するよう意識しておくことが、不要なトラブルを防ぐことにつながるといえるでしょう。
弁護士法人 一新総合法律事務所
弁護士 大橋 良二 氏
