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2025.11.10

浸水履歴の説明義務違反で売主・仲介業者に賠償命令

 今年も各地で集中豪雨が発生し、浸水被害に関する相談が相次いでいます。オーナーにとって「過去に浸水したことをどこまで説明すべきか」という点は、契約実務に直結する重要な関心事です。参考になるのが、東京地裁平成29年2月7日判決(RETIO No.111掲載)です。この判例では、売主・仲介業者の説明義務違反が認められ、574万円超という高額の損害賠償が命じられました。

 

事件の概要

原告は、三鷹市内の地下1階付き2階建て住宅を1億700万円(うち建物700万円)で購入しました。物件には地下駐車場がありましたが、引渡し後、集中豪雨によって雨水が流入し、自動車が水没する被害を受けました。 調査の結果、この地下駐車場では過去にも浸水事故が発生していたことが判明しました。しかし、売主である不動産会社や仲介業者は「浸水履歴はない」と説明していたのです。そこで原告は、「説明義務違反があった」として、総額1,663万3,540円の損害賠償を請求しました。

裁判所の判断

裁判所は、売主・仲介業者が買主の懸念を十分理解していたにもかかわらず、正確な調査や説明を怠ったことを「説明義務違反」と認定しました。ただし、請求全額を認めたわけではなく、合理的な範囲に限定して損害を算定しました。

 

 

裁判所は、売主と仲介業者に対して、上記の金額を連帯して支払うよう命じました。オーナーにとっては、「これほどの金額が実際に認められる」ことを示す実例です。

 

■ 裁判例のポイントとオーナーへの示唆

この判例のポイントは下記2点になります。

・「過去の浸水を調べれば把握できたのに、正しく説明しなかった」ことで責任が認められたこと

・その結果、574万円という高額の損害賠償が認められたこと

オーナーや不動産業者にとっては、買主の懸念に応じて過去の浸水履歴を正確に調査し、契約時に誠実に説明することが不可欠であることを示しています。

 

■ まとめ

 集中豪雨が常態化する現在、浸水は決して例外的な出来事ではありません。今回の判例は、説明を怠れば数百万円規模の賠償責任が実際に認められることを示したものです。

 特に地下駐車場や低地にある建物では、自動車など高額財産が被害に遭う可能性があります。こうした財産は単なる移動手段にとどまらず、所有者にとっては愛着が強かったり、生活の一部である場合も多く、その損害は物的損害以上に大きな精神的ショックを伴い、トラブルとなりやすい傾向があります。

 オーナーとしては、浸水履歴や排水設備の状況を正確に把握し、相手に誠実に説明することが、信頼を守り、将来の紛争を防ぐ最大の防御策となります。

 

弁護士法人 一新総合法律事務所

弁護士 大橋 良二 氏

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