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2025.05.19

下階の問題入居者が原因で退去者が発生! 次の入居希望者に説明義務はある?

事例

 あるオーナーの所有する賃貸アパートで、1階の入居者が2階の入居者の生活音に対して騒音を理由に帰宅時に怒鳴りつけ、些細な生活音で強く壁を叩く等を繰り返し、2階の入居者が退去しました。

 管理会社による注意も効果はなく、ついに2階の入居者は退去。その後、空室となった2階に新たな入居希望者が現れました。

 このような場合、オーナーとして、前の入居者が下階の問題行動で退去したことを、新しい入居希望者に伝える義務があるのでしょうか?

 

回答

 この点について、次の入居者にも同様の被害が及ぶ可能性があると判断される場合などでは、本件建物を借りるかどうかの判断のために、信義則に基づく説明義務が生じる可能性があります。説明せずに契約し、実際にトラブルが再発した場合には、告知義務違反として、損害賠償を請求される可能性もあります。

 

○貸主の告知義務を認めた裁判例

 本件建物を賃借するか否かを判断する上で重要な考慮要素については、その当時本件建物について賃貸借契約締結の申込の意思表示をする者に対し、右認識内容を告げるべき信義則上の義務を負う、とした裁判例があります。(東京地裁平成8年12月19日判決、事案としては有名な宗教団体のアジトと目されていることの告知をしなかったもの)

 具体的に告知義務が発生するかどうか、本件建物を賃借するか否かを判断する上で重要な考慮要素というほどの迷惑行為があるかどうかは、明確な線引きがあるわけではなく、具体的な迷惑行為の内容によって判断せざるをえません。

 

○告知義務違反の損害賠償義務

 では、そのような告知義務があったにもかかわらず、告知しないまま賃貸借契約を締結した場合には、どのような責任が生じうるでしょうか。

 上記の裁判例では、「右告知義務違反がなければ当該建物賃貸借契約が締結されなかったであろうと認められるときは、賃貸人は、賃借人に対し、当該建物賃貸借契約締結のために賃借人が出捐した費用相当額を賠償すべき義務」があるとして、一定額の損害賠償を認めています。

 たとえば、別の物件へ引っ越すための引っ越し代や初期費用(礼金等)などの支払義務が生じることが考えられます。

 他にも、入居者の生活が害された程度によっては慰謝料が認められるようなケースも考えられるでしょう。

 

 このように入居者に告知をする義務があるとなれば、募集は容易ではありません。となると、問題ある入居者の問題行動をやめさせるか、あるいは、問題行動が続くのであればその入居者を退去させることを考える必要があります。

 

弁護士法人 一新総合法律事務所

弁護士 大橋 良二 氏

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