仙台やまいち不動産投資センター

トピックスTOPICS

2025.04.14

賃貸人の不十分な漏水対応について、 賃借人からの損害賠償を一部認めた事例

 賃貸アパートでの漏水事故が生じた場合に、貸主は、修繕義務を負いますが、長期間にわたり修繕が行われなかったことを理由として、借主から貸主が損害賠償を受け、その請求の一部が認められた裁判例を紹介します。貸主が損害賠償を負った事例として押さえておきましょう。

 

概要

2015.3     借主が入居開始(犬1匹を飼育)

2015.7     借主の貸室で漏水発生。借主が貸主に連絡、貸主は上階借主と連絡取れず。

2016.7     漏水が継続し、借主が貸主に再度連絡。

2016.11     漏水が継続。貸主と管理会社が借主の貸室内を確認。

2017.1     貸主が上階借主と連絡したが、室内確認は行われず漏水継続。

2018.10     貸主が上階貸室を調査し、漏水原因が上階借主の洗濯機ホースの破損と判明。

2018.10.22    借主が退去。

2018.11     貸主が上階借主に対し建物明渡訴訟提起。

2018.12     上階借主が退去。

訴訟

借主が漏水による債務不履行を理由に、貸主に対し損害賠償(159万円余)、過払賃料・敷金の返還を求め訴訟提起。

 

 水漏れの際の貸主への損害賠償は、実損(靴のクリーニング代、水漏れで使えなくなった物品代)などは認められることが多いです。「賃料の一部減額」については、このケースでは3割と認定しています。上階賃借人との連絡が取れず3年以上も漏水が継続した事例ですが、慰謝料は認めていません。クリーニング代や賃料の一部減額により財産的な損害が填補されていることや、対応が不誠実なものとはいえないことが理由です。貸主が不誠実な対応をしていれば、また異なる結論となる可能性もあったでしょう。

 

参考文献

・東京地判 令2324 ウエストロー・ジャパン

RETIO. NO.121 2021 年春号

 

弁護士法人 一新総合法律事務所

弁護士 大橋 良二 氏

一覧へ戻る