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2025.03.17
賃貸物件オーナーが知っておくべき賃料増額の知識
近年の物価上昇を背景に、賃料増額に関する相談が増えています。本記事では、賃料増額の方法と押さえておくべき点について解説します。
1.入居者との合意による増額
まず、賃料増額を求める際には、借主に事情を説明し、賃料増額に納得していただくことから始めます。近隣賃料の高騰や昨今の物価上昇による管理費の増加などを理由として増額を求めるケースが多く見られます。増額申入れのタイミングは、契約更新の際に行われることが多いです。借主が了承すれば、賃料増額する内容と増額時期を記載した覚書を締結します。このように借主の納得をえて賃料増額を行うのが本来ですが、借主にとって、賃料は低いに方がよいため、増額に応じてもらえないケースも少なくありません。
2.裁判手続による増額
借主との合意が得られない場合、裁判により賃料増額請求をしたい、というご相談もあります。借地借家法第32条では、経済事情の変動や近隣類似物件との比較により、賃料が不相当となった場合に、賃料の増減を請求できると規定されています。
ただ、実際にこの請求を行っても、借主が応じない場合は、裁判所を利用した手続きが必要です。裁判所で調停や訴訟を起こすには、本人訴訟では容易ではありませんし、かといって弁護士に依頼する場合には弁護士費用や適正な賃料を算定するための不動産鑑定士による鑑定費用が必要となり、合計で数十万円の費用がかかることも珍しくありません。また、適正賃料との差が数パーセント程度の場合、裁判所が増額を認めないこともあります。数十万円掛けて増額が認められても、月に数千円程度の賃料増額では費用倒れになりかねません。
そのため、1棟全体の賃料改定や賃料が高額なテナント物件など、条件が整わない限り、法的手続を選択することは費用対効果があわないことが多いです。
3.増額に応じない場合の対応
「賃料増額に応じない場合、退去してもらうことはできるか?」と考えるオーナーもいるかもしれません。しかし、一般の賃貸借契約では、賃料増額に応じないことを理由に更新を拒否することは「正当な理由」(借地借家法第28条)とはならず、退去を求めることは難しいです。
賃料増額に応じない場合に、貸主が退去を求めることが可能なのは、契約期間満了時に契約が終了する定期借家契約の場合に限られます。
4.不動産オーナーが知っておくべきこと
賃貸借契約を一度締結すると、賃料増額は容易ではありません。裁判などの法的手続きもコストや時間を考えると現実的でない場合が多いです。そうなると、当初の契約時の賃料設定が重要であることと、増額を求める際には近隣相場の上昇や物価上昇による管理コストの上昇などを根拠として、借主が納得して応じられるような増額を求めて説明を行うこと、裁判などで賃料増額を行うことは費用対効果がよくない場合が多いという点を抑えておくことが重要です。
弁護士法人 一新総合法律事務所
弁護士 大橋 良二 氏