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2024.04.08

オーナーによる残置物撤去の 自力救済について

 賃貸借契約を解約した後、入居者が残置物を撤去しない場合、オーナーはどのように対処するべきでしょうか。本稿では、オーナーによる残置物撤去(自力救済)についての法的な基礎と注意点を説明します。

 

■自力救済の法的な基礎

 自力救済とは、自分の権利を侵害されたときに、裁判所に頼らずに自分で救済することです。自力救済は、社会に存在する紛争のすべての解決を裁判所が引き受けることができない以上は一定の範囲で認められますが、その範囲は極めて限定的です。

 オーナーの残置物撤去についていいますと、入居者の残置物に対して無断で処分したり、損壊したりすることは、入居者の所有権を侵害する不法行為となります。場合によっては器物損壊罪などの刑事罰に問われてしまう可能性もあります。

 以下の裁判例においても、オーナーと入居者との間で入居者の所有物の搬出の合意を部分的に無効としたものがあります。

 

東京高裁平成3129日判決

 本件の賃貸借契約書には、「賃貸借終了後、賃借人が本件建物内の所有物件を賃貸人の指定する期限内に搬出しないときは、賃貸人はこれを搬出保管または処分の処置をとることができる」旨の条項がありました。

 そして、オーナーが、入居者の賃料滞納を原因として契約を解除し、本件建物の入口扉に錠を取付け、その後本件建物に存在した入居者所有の動産類を搬出処分したことから、入居者がオーナーに対し、違法な自力救済であるとして損害賠償を請求した事案になります。

 裁判所は、契約書中の上記規定内容は、本件建物について賃借人の占有に対する侵害を伴わない態様における搬出、処分(例えば、賃借人が任意に本件建物から退去した後における残された物件の搬出、処分)について定めたものと解すべきであるとして、入居者がまだ居住しているにも関わらず、残置物を撤去してしまうことは認められないことと判断されました。

 

 したがって、オーナーは、入居者の残置物を撤去する際には、まずは入居者に対して、退去後の残置物の撤去を求めるべきでしょう。

 あるいはオーナーの費用負担で残置物撤去を行うとの通知書を送付し、残置物の所有権を放棄して撤去されることにつき異議がないことについて入居者と合意書を取り交わし、客観的に残置物撤去の許可を得たことの書面を残しておくことが望ましいといえます。

 

「参考残置物の処理等に関するモデル契約条項の解説等

 https://www.mlit.go.jp/common/001486429.pdf

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