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2023.08.21

老朽化建物の倒壊による入居者の 死傷とオーナーの責任について

(ご相談)私は賃貸アパートを所有しています。築45年と古いアパートなのですが、入居者からあまり賃料も取れないため、十分な補修も行えていません。最近は地震も多いのですが、万が一、大地震などで建物が倒壊して入居者が怪我をしたような場合に、私が責任を負うようなことはありうるのでしょうか?

 

こちらときどきいただくご相談ですが、結論としては、建物があるべき性能を有していなかった場合や、必要な補修を行っていない場合には、責任を負う可能性があります。

民法には、工作物責任といって、建物の設置又は保存に瑕疵があり、それによって生じた損害を賠償する責任を負う、という規定があります。

 

◆民法717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)

 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

(以下略)

 

この規定に基づき、責任を負った裁判例があります。神戸地裁の平成11年9月20日判決です。

 

こちらの裁判例は、阪神・淡路大震災により賃貸マンションの一階部分が倒壊して賃借人4名が死亡したために、賃借人の遺族が賃貸人・所有者に対して上記の工作物責任に基づく損害賠償をしたものです。遺族からの損害賠償請求額は総額3億円を超えました。

 

こちらはあれだけの被害が生じた阪神淡路大震災ですから、「やむをえない」「責任はない」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

 

ですが、こちらの裁判例では、結論として、オーナーの責任を一部認めました。(仲介した不動産会社への請求は認めませんでした。)

 

こちらは旧耐震基準の建物だったのですが、その当時の基準に考えてもの建物が通常有すべき安全性を有していなかった、として賃貸人の工作物責任を認めたのです。

そして、賠償額については、大規模な地震が原因となっていることを考慮して賠償額を5割減額して、1億3,000万円の賠償責任を認めました。

 

こちらのオーナーは、築16年目の本物件を取得して、賃貸物件としていたところ、築31年目で阪神・淡路大震災が起こり、建築当時の欠陥により1億3,000万円もの賠償責任を負うことになったのでした。

 

このように、建物がその通常有すべき安全性を有しない、と判断される場合には、所有者・賃貸人は、物件が地震で倒壊する等の事故が起こった場合にその責任を負う可能性があります。予想もできない大地震であったというだけでは免責されるものなく、貸主には、入居者に対する重い責任を負うものであることを知っておきましょう。

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