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2023.02.13

裁判によらない明渡しも認められる? ~家賃保証会社の自力救済条項は違法~ 最高裁令和4年12月12日判決について

今回は話題の最高裁令和4年12月12日判決を確認しましょう。

 

賃料滞納の借主を追い出せるのか?

 賃貸物件の借主が賃料を長期に渡り滞納しているのであれば、賃貸借契約を解除して、退去を求めることができます。では、退去を求めても入居者が出ていかない場合に、たとえば、貸主が鍵を交換して部屋に入れなくしたり、部屋に入って物を外に出したりすることはできるでしょうか。結論としては、これは認められません。

 このように、自己の権利が侵害された場合であっても、実力行使で権利を実現してはならない、というルールを自力救済禁止の原則といいます。上記の場合では、裁判手続を使う必要があります。

 

裁判は時間も費用もかかる

 ですが、実際に裁判手続を利用すると、相当程度の時間と費用がかかります。そのことから、できるだけ裁判手続を利用せずに明渡しを実現したい、というのも理解できる話です。多く明渡し案件を取り扱う賃料保証会社であれば尚更です。そこで、裁判で問題となった保証会社では、契約により以下のような条件の場合に限定して、裁判手続によらない明渡しを実現しようとしました。

 

賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠っていること

合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況であること

電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から本件建物を相当期間利用していないものと認められること

本件建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存すること

 

今回裁判となった保証会社では、このような条件(4要件)が満たされる場合には、明渡しがあったとみなして、裁判手続を経ないでも室内の物品の撤去などをしてもよい、と取り扱うことにしました。このような契約条項の有効性を巡って争われたのが今回の裁判となります。

一審の大阪地裁の判決では無効、原審の大阪高裁の判決では適法と判断しました。ですが、今回の最高裁判決では、当該条項を違法・無効と判断しました。

 最高裁判決の概要としては、上記の4要件による明渡しが、賃貸借契約が終了している場合に限定されていないことを前提(※)として、

・賃借人は、…原契約の当事者でもない保証会社の一存でその使用収益権が制限されること

・賃貸人が賃借人に対して本件建物の明渡請求権を有し、これが法律に定める手続によることなく実現されたのと同様の状態に置かれるのであって、著しく不当

 

といった理由によるものです。(なお、この判決には他に無催告解除の是非の論点もあります。)

 

こちらの判例は、上記(※)の前提がポイントであり、今後の様々な法的議論を生むところと思われますが、まずはこの判決と自力救済が禁止されている、という点は押さえておきましょう。

 

弁護士法人 一新総合法律事務所 弁護士 大橋 良二 氏

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