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2022.12.12

~インフレに備えて〜 賃料増減額請求のルールを改めて確認

 消費税の増税を除けば30年ぶりの物価上昇を受けて、賃貸物件でも将来的には賃料増額請求の可能性があると考えられます。そこで今回は、法律上の賃料増減額のルールについて改めて確認しておきましょう。

 まず、通常の(定期借家ではない)賃貸住宅では、借地借家法32条に賃料増減額をめぐるルールが規定されています。

 

(借賃増減請求権)

第三十二条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

 

 少々わかりにくいですが、「物件の賃料が、経済事情の変動等により周囲の建物の賃料に比べて不相当となった場合には、賃料を増減額できる」といった規定です。

 たとえば、周辺の賃料が5万円だった時代に、5万円で貸し出した物件があったとします。そして、数十年が経過して、周辺の同じような物件の賃料相場が10万円くらいとなったとします。この場合には、この賃料増減額請求権を利用して、賃借人の方が賃料増額に応じないとしても、この借地借家法32条に基づき、法的手続により賃料増額(たとえば、5万円から10万円に増額請求)を求めていくことができます。

 ポイントは、あくまでも周辺の相場が上がった場合に、その相場の上昇割合に応じて増額できる、というのが基本的な考え方だという点です。

 つまり、周辺の賃料相場が5万円だったときに、早く入居を決めたいから3万円で契約したとします。その後、周辺の相場が2倍の10万円に上がったとして、3万円を10万円に増額できるか、というと、そうではなく、3万円の2倍の6万円に請求できる、という考え方となります。つまり、特定の部屋のみ低額に契約した場合に、後に周辺相場に併せて賃料を増額することは難しい、ということです。

 

以上のとおりですので、冒頭の事例については、周辺の賃料相場も増加しているようであれば、増額請求を求めること自体はできそうですが、単に「以前に安く契約してしまったので、他の部屋にあわせて増額したい」という場合には認められない可能性が高いでしょう。

 

なお、上記の事例と説明は、理解のために簡易化しています。実際には個別の事情によりますので、実際に賃料増減額等を検討される場合には、弁護士等の専門家に相談してご対応ください。

 

弁護士法人 一新総合法律事務所

弁護士 大橋 良二 氏

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