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2022.06.13

行き過ぎた節税は認められない!~令和4年4月19日第三小法廷判決

 先日、マンションの相続税を巡り遺族が争った最高裁判決が下され、相続税を支払う遺族側敗訴の結論となりました。今回は、簡単に概要を確認しましょう。

 

ポイント

・判決は租税負担の公平を害するような過度な節税手法は許さないという常識的なもの

・同様の節税方法を選択して不動産を購入した方は要対応

 

事案は、以下のとおりです。

 

・2009年、札幌市の男性が、都内のマンションを10億円以上借り入れした上で、合計14億円弱で購入。

・2012年、男性が94歳で死亡

・評価通達に基づきマンションを約3億3000万円と評価して相続税申告

・マンションの購入・借入は、相続税の負担減免のために行われた

・マンション購入・借入しなければ、課税価格の合計は、6億円を超える

・マンション購入・借入した結果、購入時の借り入れ(負債)と路線価評価による減価により、課税価格の合計は、2800万円となり、相続税の基礎控除により相続税は0円に。

・税務署長はマンションを不動産鑑定により合計13億弱と評価し、相続税を2億4000万円課税

・遺族は、不動産の評価を評価通達によらないことを平等原則に反すると主張

 

 相続税法上、財産の評価は「取得時の時価」によります。(相続税法22条)ただ、相続により不動産を取引するわけではないので時価は評価しにくいですし、すべて鑑定するのも現実的ではありません。財産価格を相続税法上、国税庁の「財産評価基本通達」により評価します。そのため評価方法による差が生じ、この時価と評価方法の差を使ったのがこの節税方法です。

 

不動産鑑定による評価額:13億円程度(購入時14億円弱)

 路線価(財産評価基本通達)による価格:3億3000万円

 → 評価額の乖離を利用した節税。(14億弱で購入した不動産の評価が3.3億)

    評価通達によらないのは平等原則違反というのが相続人の主張

 

税金対策でのマンション購入・借入によって、課税価格の合計は6億超とのことですので、数億円の税金がかかるところを、マンション購入・借入の上で評価通達により評価し、相続税0円として申告した、というものです。節税対策した結果、数億の税金の支払を免れるのであれば、公平性を欠くことは明らかですので、結論としては常識的なものでしょう。

 

この判例についてはいろいろな評価があるようですし、取引価格14億弱で購入した不動産を、3億3000万円と評価してしまうような評価通達にも問題はあるように思いますが、かといって、実勢との乖離を利用した過度な節税は認められない、というところでしょう。

 

弁護士法人

一新総合法律事務所

弁護士 大橋 良二 氏

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